最近、うちの会社は外国人の出入りが多くなっている。
請け負う事業が増えて、その関係で外国人が増えているのかもしれない。
ただ、英語が話せないと相手と話が出来ないから、困ってしまう。
俺は英語が話せるから問題ないが、他の連中は話せないから誰かが訳してやらないといけない。
その誰かとは大体俺になるわけだが・・・。
何て言うか、外国人も日本語が話せればスムーズになるのにな。
そう言っても、難しいから無理な話かもしれない。
俺も最初は英語が話せなくて、アメリカへ行ったとき困ってしまった。
何も話せなくて、周囲から省かれることもあった。
「Long time! Was it made fine?」
「おっ、びっくりした!
なんだ、REXカードじゃないか、久しぶりだな!
俺は元気だよ、お前も元気そうだな」
「うん、すごく元気だよ~」
彼はREXカード。
年会費が初年度無料となっていて、翌年から支払うようになっている。
面白い程ポイントが貯まると言われていて、ポイントも高還元だから嬉しい。
申し込みの際、外国人登録証明書やパスポートを提出すれば、外国人でも申し込みが可能となっているから、外国人にオススメのカードなんだ。
REXカードは、外国人だけど日本語もペラペラに話すことが出来る。
だから、社内でもすごく人気だし話しやすくて楽しいと言われている。
女子からの人気も高くて、本当に人見知りをしない。
いきなり英語で話しかけてくるから、一瞬誰なのか分からなかった。
「なんだよー、驚かせやがって!」
「ははっ、アメックスは相変わらずビビりだなぁ!」
「ば、ばかやろ、ビビりじゃねーし!」
「そういうのも相変わらずだなぁ」
ダメだ・・・何を言っても奴のペースに飲み込まれてしまう。
悪い奴じゃないけど、なんかこのペース嫌だな・・・。
話してて楽しいしいざという時頼もしいけど、普段は気が抜けているというか・・・。
ただ、REXカードがこっちに来ているという事は、新しいプロジェクトを始めるという事だ。
また、新しく人を収集したりするんだろうな・・。
俺も駆り出されるんだろうか・・・それだったら大変なことになるな。
新しいことを始めるのは楽しいし、興味深くていいと思っている。
「You will also be a member of a new project?」
「いや、俺はまだ何も聞いてないけど・・・。
まさか、俺もメンバーに加えられてんのかな・・・」
もし、そうだったら仕事量が増えるから正直困ってしまう。
今任せてもらっている仕事も、やっと慣れてきたところでまだ安心なんて出来ない。
そんな中、新しい仕事を任されたら首が回らないような気がする。
だけど、REXカードは仕事が出来るしいつも面白い企画を出してくれる。
それが好きで今まで俺も関わってきた。
今度はどんな企画を提案してくれるんだろうか。
聞きたいが、外部に漏らすわけにはいかないから教えてもらえないか・・・。
その時、上司に呼ばれて俺はREXカードと一度別れることにした。
「アメックス、新しいプロジェクトに是非参加してくれないか?
お前はREXカードと親しいし、過去に何度も二人で成功させている。
今回も我が社の為に、一肌脱いでくれるか?」
「嬉しく思いますが、私でよろしいのですか?」
「ああ、お前以外いないと考えているんだ」
「かしこまりました、お引き受けいたします」
そう言って、部長室を後にした。
はぁ・・・いつも部長と話す時は緊張するなー。
何て言うか威圧感が半端ない・・・だからうまく話せない時もある。
外に出て自席へと戻ると、REXカードが俺を待っていた。
席に戻ると、すでに資料を用意していて準備万端に見えた。
俺はその資料を受け取り、内容を確認していく。
今回は、カフェの依頼が来たようだ。
そう言えば、まだ紹介していなかったがうちの会社はデザイン会社で、多くの店の内装を任されている。
だから、カフェとか保育園とかの内装を任されることもある。
残業なんて時期によってはすごいことになるし、やることが多いからみんな毎日忙しくしている。
中には帰宅できずに社内に泊まり込んでいる者もいる。
「やっぱりアメックスもメンバーだったのか!
よし、この案でどう思う?」
資料を確認すると、それはアットホームなカフェのコンセプトが書かれていた。
大人が落ち着いて過ごせる空間づくりをしたいと言うのはわかるが、何か足りないような気がする。
照明を薄暗くして、温かな雰囲気を出すと言うのは俺も賛成だ。
ただ、これだけじゃまだ完璧じゃない。
料理にもこだわってみるのがいいかもしれない。
俺とREXカードはお互いにアイデアを出し合ったが、実際に店内に出向かないとわからないかもしれない。
そこで俺たちは部長に断りを入れて、一度店内を訪れることにした。
行動は早い方がいいという事で、午後一で俺たちはその店舗へと向かった。
「初めまして、✕✕デザイン事務所から参りましたアメックスと申します。
こちらはREXカードと申します」
「ご丁寧にどうもありがとうございます」
「早速ですが、店内を拝見させていただけますでしょうか?」
「ええ、構いません」
店長にきちんと挨拶をして、俺たちは何枚か写真を撮った。
撮っておけば、社内に帰ってからでも話し合うことが出来るから。
最初は店内写真を撮り、それから俺たちのプランを提供した。
しかし、店長はなかなか首を縦には振ってくれなかった。
実は、俺も納得はしていないがREXカードが出すだけ出してみようと言ったから、納得するしかなかった。
店長は、常連さんを大切にしていると話し、新しい客も少し増やしたいと言った。
この店内を活かせるようなアイデア・・・。
REXカードも隣で困ってしまい、沈黙になってしまった。
このままじゃまずいぞ・・・断られてしまったら大変だ。
その時、ふと奥にある小さな本棚に目がいった。
「それならば、読書が出来るカフェと言うのはどうでしょうか?
食事をしながらゆったり読書できるような、くつろげるカフェにしませんか?」
「ブックカフェみたいなこと?」
「そうそう、本棚の数を増やして読書して過ごせる空間を提供する。
もし店長さんさえよろしければ、オーガニック野菜を使ったお料理をお出しするのもいいと思うのですが、どうでしょうか?」
「おー、それいいです!
ぜひやってみたい!」
「では、店内はこんな感じにして・・・こうして・・・」
店長が納得してくれて、俺は資料を裏面にしてアイデアをまとめていき、その場で店長に確認してもらった。
もちろん、後日改めてちゃんとした資料を持ってくるつもりだ。
話し合いの結果、店長がとても喜んでくれているから、その期待を裏切りたくない。
再び約束を取り付け、俺たちは店舗を後にした。
はぁ・・・どうなる事かと思ったが、店長が納得してくれたから安心した。
最初はどうしようかと思ったけど、うまく行きそうな気がする。
いや、うまくいくように俺たちで進めていかなければいけない。
「よくあんなアイデアが思いついたな!
俺にはその考えがなかったから、正直悔しい」
「偶然なんだって、本当に偶然!
奥に本棚が見えたから、出てきただけなんだ」
「それでもすごいと思うよ!
俺も見習わないといけないな~」
「そんなに褒めるなって!」
REXカードが俺をおだててくるから、何だか変な感じがする。
ただ、悪くはないしなんか照れくさい。
褒められることに慣れてないから、こそばゆい。
そんなことを話しながら、俺たちは会社へと戻って部長へ報告した。
部長はとても嬉しそうに喜んでくれた。
俺たちもまさか店長に納得してもらえるとは思っていなかったから、正直とてもびっくりしている。
時間がもったいないから、俺はすぐに資料を作り直していく。
こういうのは出来る時にしてしまった方がいいから。
REXカードも一緒に資料をまとめてくれるから、すごく助かる。
「なんだなんだ、契約が取れたのか?」
「ああ、契約が取れそうだから、今が踏ん張り時なんだ!
カフェなんだが、読書できる感じにしようかと思っててさ」
「あら、それすっごくいいじゃない!
リニューアルオープンしたら、私も通いたい!」
意外にも好感触で驚いた。
つまらないと言われるかと思っていたけど、好感触だったとは。
少しずつでもいいから、店長と協力をしていい店を作り上げていきたい。
なんだかんだ言いつつ、気が付けばあっという間に日にちが過ぎて行った。
あれから何度もあの店舗へ足を運んで、店長の承諾を得ていよいよ工事が始まった。
業者に任せっきりにしているのは良くないから、俺はREXカードと交代で確認していくことにした。
その行動が、店長や業者に好印象ですごく親しくなった。
何日間にもわたる工事が終了して、リニューアルした店内は素敵な雰囲気を醸し出している店になって、以前とは違った意味で良くなった。
「アメックスさん、REXカードさん、ありがとうございました。
とっても素敵な店内になったので、私も満足してます!」
「こちらこそ、素敵な店づくりに携わることが出来て、光栄です」
店長と話をして、俺たちは別れることにした。
この件について部長に話したら、すごく嬉しそうにしていて、あの後店長から感謝の電話がかかってきたらしい。
大人から子供まで楽しめるブックカフェとして有名になり、テレビで特集されることも多くなって、何だか嬉しかった。
実は、REXカードもあのカフェのとりこになってしまい、現在通い続けているんだとか。
他の外国人も誘って一緒に行くこともあるみたいだが、店長はそれもまた嬉しい様子。
自分達のアイデアを活かして、一つでも多くの店が生まれ変わることをREXカードは誰よりも強く願って仕事をしている。
俺も見習わなくちゃな。
「Does everybody not go to visit the book cafe, too?」