いやいや、この間は甘いものを一気に摂取しすぎてしまった。
そろそろ健康には気を使い始めた方がいいのかもしれないな・・・。
近年ではよく分からない病気も増えてきているから、十分注意しないといけない。
そういえば、最近少しだけいいことがあったんだ。
それは、自宅の近くにあの西友とリヴィンが出来たことなんだ。
本当に価格が安いから、財布に優しくて使っている。
今では行きつけの場所となっている。
「アメックス、聞いて聞いて!
西友でキャベツが一玉89円だったの!」
「キャベツが89円?!
手に入れたのか?」
「うん、もちろんよ!
5玉買っちゃって、今キャベツしか食べてないの・・」
「さすがに買いすぎだろ!」
そう話しているのは、セゾンカード。
年会費永年無料で毎月5日・20日は会員限定でセゾングループの西友とリヴィンで商品が5%OFFになる。
今すぐカードが欲しい人には必見のカードだと言える。
セゾンカードは、気配りが出来る女性で思い立ったらすぐに行動してしまう、やや猪突猛進のような性格をしている。
そのせいなのか、注意力は少々足りないから心配だ。
旅行に行ってもほとんど迷ってしまい、観光もろくに出来ないんだとか。
「アメックスも今度一緒に西友行かない?
すごく安くて主婦の味方なんだから!」
「俺、主婦じゃないんだけど・・・」
「何よ、庶民の生活には興味ないっていうの?」
「そんなこと言ってないだろ?
俺だって庶民じゃないか・・・」
「アメックスは庶民じゃないでしょっ。
いいところの息子さんって言った感じだと思うけど?」
俺、そんな風に見られていたのか?
確かに俺は変わり者だけど、そこまで金持ちな訳じゃない。
こだわりがあるとか、一匹狼のような存在であって庶民だと思うんだけどな・・・。
自分から見るのと他人から見るのとでは、印象が変わってくるのかも。
だけど、俺だって西友に通っている。
すると、セゾンカードが口を開いた。
「私、行くとしたら国内旅行がいいんだけど、いい場所知らない?」
「岡山県の名物が太巻きなんだけど、その太巻きがいいんだよな・
色々な模様の太巻きがあるから、見て楽しいし食べて美味しい」
「岡山県かぁ・・・太巻きとかめっちゃ気になる!
それって食べられるの?」
「どうだったかな・・・、たぶん自分で作るんじゃないか」
セゾンカードが、メモ帳に岡山と書き始めた。
お、本気で旅行に出るつもりなのか?
俺も色々な場所を旅行してきたけど、少し田舎の場所って人が親切なんだよな。
岡山だけではなくて、山形も楽しかったっけな。
人が優しくて飯もすごくうまかった。
セゾンカードがスマホから岡山について調べている。
岡山と言ったら、やはりきびだんごだろうか。
桃太郎でも有名だしな。
「あっ、この間アメックスの兄弟に会ったよ。
すごい友達増えていて、びっくりしちゃった!」
「あぁ、あのプラチナとかゴールドに会ったのか?」
あいつらは俺の兄弟で、向こうが兄貴なんだ。
普段は世界を股にかけているから、なかなか実家に帰ってこない。
みんな事情を抱えているから、あまり遊びに来てくれない。
セゾンカードは何を話したんだろうか。
まさか、俺の悪口じゃないだろうな・・・。
実を言うと、セゾンカードとはいとこのようなものなんだ。
セゾンカードの方にも、俺と同じ名前のアメックスがいるんだ。
知ってる奴は知ってると思うけど、それぞれ違うスペックを持っているから覚えておいてほしい。
「アメックスって、幹事とか向いてそうだよね?
今度参加者募って、国内旅行でも行こうよ~」
「確かにこの会社は旅行好きが揃ってるから、いいかもしれないな。
その前に、セゾンカード企画西友めぐりでもしようぜ!」
「さんせーい!
西友はいいよ、あんな格安で販売してくれるんだから。
今日は20日だし、また西友に行って、何か買っちゃおっかな!」
「買いすぎには注意しろよな」
セゾンカードはすぐ西友で買いこんでしまう。
何て言うか、楽天カードと似たような感じがするが・・・。
それになぜかいつも現金を持ち歩かず、電子マネーだけを持ち歩いている。
何を買うにしても、必ず電子マネーで済ませてしまう。
確かに楽かもしれないけど、何だか危ないような気もするな・・・。
セゾンカードが買いすぎてしまうという事は、社内でも有名になっている。
・・・で、なんでこんなことになった?
気が付けば、俺はセゾンカードと一緒に西友に来ていた。
何があったのかと言うと、就業時間になった瞬間、セゾンカードに連行されたのだ。
断る暇もなく連れてこられてしまって、このありさま。
連行されるのはいいけど・・・ここに一人置き去りにするなよな!!
下手に動き回るのは良くないと思って、俺は壁際に立っていた。
動き回ってすれ違いとか入れ違いになっても困るからな。
セゾンカードのヤツ、どこ行きやがった?
しばらく待っていると、セゾンカードの奴が戻ってきた。
「いやー、お待たせ♪」
「いやー、お待たせ♪じゃねーよ!!
急に居なくなるなよな!」
「だって、アメックスボーっとしてたからさ!
ねぇねぇ、これ見て!」
セゾンカードがご機嫌に俺に籠の中身を見せてきた。
その籠の中を見て、俺は驚いた。
籠の中には、キャベツとレタスが入っていた。
それもこれでもかというくらい大量に。
こんな大量に買って消費しきれるのか?!
セゾンカードは嬉しそうに笑いながら、カートを押している。
「なぁ、そんなにキャベツとレタス買ってどうするんだ?
消費しきれるのか?」
「何言ってんの!
全部キャベツだから、キャベツダイエットするのよ!」
まさか、全部キャベツだと思ってるのか?
嘘だろ・・・・俺だってキャベツとレタスの違いくらい知ってるぞ・・。
セゾンカードはわかっていないようだ。
全部キャベツだと思っているらしい。
これはさすがに言った方がいいよな・・・ためになるし。
「セゾンカード、これキャベツとレタス混ざってんぞ」
「し、知ってるよ!
今レタスを返しに行こうかと思ってたんだよ!」
「じゃあ、さっさとレタス返してキャベツだけにした方がいいんじゃないか?
返して来たらレジに行って、会計して終わりだな!」
「うん!」
俺はそう言って、セゾンカードを見送った。
ちょうど今いる場所はレジから近いし、ここでいいだろう。
それにしても、この西友ってすごい客が来るんだな・・・。
もっと店舗を展開すればいいのに。
全国の主婦たちが助かるだろうし、子供たちだって安くジュースやアイスを買えるからきっと嬉しんじゃないだろうか。
そんなことを考えていると、セゾンカードが戻ってきた。
「お待たせー!」
「やっと来たか・・・って、お前それ全部レタスじゃねーか!!
キャベツはどうしたんだよ!」
「え・・・これキャベツじゃないの?」
「ちげーよッ!!」
よりによって、キャベツを置いて全部レタスを持ってくるとは・・・!
相変わらず、やらかしてくれるな。
だけど、ムカついたりはしていない。
むしろ、セゾンカードらしい、注意力が無くて猪突猛進で。
見かねた俺は、セゾンカードと一緒にキャベツコーナーへと向かった。
レタスはすでに残り数個しかなかった。
「もうレタス少ないね!」
「戻せ戻せ、レタスを!
ほら、キャベツはこっちだ!」
「アメックス、女子力高ーい!」
「こういうのは女子力じゃねーよッ!!」
俺が怒っても、セゾンカードは笑っている。
怒られてるのに笑う奴があるか!
キャベツとレタスの区別もつかないなんて、先が思いやられるぞ・・・。
男ならともかく、女だったら知っておいた方がいいと思うんだが。
セゾンカードのヤツ、本当に違い分かったのか?
念のため、今度またここへきてキャベツを持ってこさせよう。