最近ではゆるキャラなどが流行っているが、キャラクター物は強いと思う。
へたすれば子供からお年寄りまで、好きなキャラクターだっているから。
実は、俺たちの会社にもキャラクターが好きな奴がいる。
何だか子供っぽくて、でも仕事は出来る。
だから、ギャップがすごいんだよな。
俺も机の上にリラックマを置いているが、その人物はスヌーピーを置いている。
一つや二つではなくて、いくつか置いてある。
それに触れられたくないのか、触れようとすると嫌そうな表情をする。
ぬいぐるみが好きと言うよりは、スヌーピーが好きといった感じ。
「アメックス先輩!
この書類、確認していただけますか?」
「ああ、分かった、任せろって!」
俺はそう言って、後輩から渡された書類を確認していく。
彼女は後輩のスヌーピー一般カード。
初年度のみ年会費が無料となっている、スヌーピー好きにはお勧めのカード。
グローバルポイントを貯めると、スヌーピーのオリジナルグッズと交換してもらえるようになっているんだ。
デザインも4種類あるから、自分お好きなデザインを選べるようになっている。
書類を確認していくが、特にこれと言った問題や不備も無くて大丈夫そうだった。
俺はその書類を確認し終えてから、スヌーピー一般カードに返却した。
「うん、そのままで大丈夫だ。
あとは次長に提出すれば完璧だな!」
「はい、ありがとうございます!」
スヌーピー一般カードは人懐こくて、他人の痛みがわかる奴だ。
普段はおとなしい性格だけど、いざという時には度胸がある。
周囲からは、まるで妹のような存在として可愛がられている。
確かに、身長も低いし話し方も少しおっとりしていて、女の子らしい。
年齢も皆より若いし、だから年下扱いと言うかそうみられるのかもしれない。
そう言えば、俺スヌーピー展のチケット持ってるんだった。
それも2枚っていう・・・。
実はどうしていいのか困っていて、そのままにしていた。
俺はスヌーピーに興味がなかったから。
でも捨てるにはもったいないし・・・と言ってずっとデスクの引き出しにしまっている。
「スヌーピー一般カード、スヌーピー好きだろ?
もし良かったら、友達と一緒にスヌーピー展行ってこないか?
実はチケットが2枚あるんだよ」
「えっ、いいんですか?!
しかも2枚も譲っていただけるなんて!!
ありがとうございます!」
喜んでもらえて何よりだ。
正直、困っていたからちょうど良かった。
行ってくれる人がいるなら、活用してもらった方がいいもんな。
スヌーピー一般カードがお金を払いますとか言い出すから、いらないと断った。
別に俺がチケットを購入したわけじゃないから、そんなことしなくてもいい。
俺ももらっただけだし、何も気にしなくていいんだ。
そう伝えると、スヌーピー一般カードは本当に嬉しそうだった。
子供が欲しかったものをもらえたような表情だ。
「あ、でも一緒に行ける相手いないので一緒に行きませんか?
アメックス先輩、スヌーピーは好きじゃないですか?」
「俺はリラックマ派だからな・・・。
まぁ、行ってもいいけど」
「本当ですか!
アメックス先輩にたくさん魅力を教えますね!」
「いや、ほどほどでいいよ・・・」
俺がそう言うと、スヌーピー一般カードが笑った。
そこまでの魅力を求めているわけではないから、詳しく教えてくれなくても大丈夫。
スヌーピーが嫌いなわけではないけど、リラックマほどの情熱はない。
最近では、好きなキャラクターをまた見つけたんだけどな。
まあ、スヌーピーについて調べてみるのも悪くないかもしれない。
期間限定で開催されるらしいから、じっくり観察してみるか。
俺はスヌーピー一般カードを見て笑った。
「アメックス先輩、豆知識知りたくないですか?
スヌーピーって視力が悪いから、コンタクトレンズしているんですよ」
「マジでか!!
それは知らんかったわ!」
スヌーピーってコンタクトレンズしてたのかよ!!
犬だからって甘く見すぎてた・・・犬でもコンタクトするのか・・・。
また、ウサギが大好きらしくて、スヌーピーが入院するとお見舞いにウサギたちが駆けつけてくれるのだとか。
猟犬であるのに、何だかすごい設定だな・・・。
聞けば聞くほど、少しずつ興味が湧いてきたぞ。
期間限定で開催されるくらい人気になっているキャラだから、一度行ってみるか。
二人で待ち合わせ時間や場所を決めて、それぞれの持ち場へと戻った。
まだ仕事中だから、私語は慎まないといけない。
そして午後に数分ある休憩時。
俺はタバコを吸いに喫煙室へと向かった。
「アメックス、スヌーピー展行くって本当?」
同僚の女子社員から話しかけられて、俺は煙草を口から離した。
もう噂になっているのか?
この会社は、一体どこから情報が流れているんだ。
どこから流れているのか分からなくて、少し怖く感じる。
別に周囲にばれて困るわけではないけれど、あまりいい気はしないな。
俺はスヌーピー一般カードと一緒に行くことを伝えた。
すると、同僚がにやにやし始めた。
「スヌーピーがコンタクトレンズしてるって知っているか?」
「えぇっ、何それ!!
全く知らなかった・・・コンタクトしてたの?!」
「ああ、俺もスヌーピー一般カードから聞いて知ったんだ。
まさか、コンタクトしてるとは思わないよな!」
「うん、すごく意外だった!
犬がコンタクトをするなんて・・・斬新すぎでしょう!」
同僚の女性が驚いている。
俺もさっき驚いたから、その気持ちがよくわかる。
本当に、犬がコンタクトをするなんて。
予想外にもほどがある。
そう色々話して、俺たちは再び仕事に戻った。
そして、いよいよやってきてしまった。
駅前で約束をしているから、駅前まで向かった。
そこにはすでにスヌーピー一般カードが来ていて、楽しそうに笑っていた。
待ち合わせ時間に贈れないようにと思って、少し早く来たつもりが待たせていたとはな。
俺は早歩きで待ち合わせ場所へと向かったが、変な奴に絡まれてしまった。
俺が絡まれたんじゃなくて、スヌーピー一般カードが絡まれてしまっている。
「おいおい、誰を待ってるんだよ~?」
「カーノジョ、オレらと遊びにいこーよ!」
「やめて下さい!
私、人を待っているんです!」
スヌーピー一般カードが嫌がっている。
一体あの男二人組は何なんだ?
嫌がっている相手にしつこく構い続ける連中。
このままじゃ困ったことになりかねないぞ。
俺は急いでスヌーピー一般カードの元へ向かっていく。
スヌーピー一般カードを庇うようにして、俺は前に出た。
「嫌がっているんだから、やめろって」
「なんだオメー!!
部外者は引っ込んでろよ!」
「オマエ、正義感ぶってカッコつけんなよ!!」
「うるせーな、さっさとどっかに行きやがれ」
連中が胸倉をつかんできたから、俺はその腕をつかみ思い切り地面へ投げつけた。
もちろん、容赦や手加減くらいしている。
手加減しなかったら骨折させることになるからな。
そうなったら、俺の方が悪くなってしまうから気を付けないと。
打ち所が悪かったのか、連中は腰や背中を手で摩りながらその場で立ち上がった。
そんなに痛くないと思うんだが・・・むしろ弱すぎる。
外見からして何かやってそうな感じがしたが、そんなことなかったか。
それはそれで都合が良かったんだけど。
「スヌーピー一般カード、大丈夫か?
ケガとかしてないか?」
「は、はい・・・」
「ごめんな、怖い思いさせて。
さ、スヌーピー展に行こうぜ!」
「アメックス先輩がいて下さって、良かったです・・・!
はい、行きましょう!」
俺たちはそのまま会場へと向かった。
駅からそう遠くはなくて、歩いてすぐに到着した。
良かった、駅から近くて。
遠いと迷いそうになるから、近くて本当に助かった。
中へ入ると、どこもかしこもスヌーピーが置かれていて不思議な空間だった。
だが、スヌーピーが好きな人達の集まりだから、食いつきや反応が半端じゃない。
すごく盛り上がりを見せている。
「すごーい、これ初代のスヌーピーですよ!!
これなんかスヌーピーが寝てる犬小屋だっ!」
やっぱり、スヌーピーが好きと言うだけあってすごく詳しい。
ファンってこんな感じなんだろうか。
俺もリラックマが好きだけど、そこまで詳しくないような気がするな。
だけど、スヌーピー一般カードが俺に一生懸命説明をしてくれるから。
俺もしっかり聞かなきゃいけないと思った。
「スヌーピー一般カードは詳しいな」
「ええ、好きですからね!
今度は、リラックマについて私に教えて下さいね!」
「ああ、そうだな。
今度はリラックマの魅力について教えてやるよ」
俺が笑いながら言うと、スヌーピー一般カードも笑った。
そうだな、今回は俺がスヌーピーについて教えてもらって今度は俺がリラックマについて教えてやればいいんだ。
互いの好きなものを誰かと共有できることは、簡単そうでなかなか難しいことだ。
だから、こういうことが話せるって嬉しく思える。
「早速質問です、アメックス先生!」
「おっ、なんだ?」
「中身がおじさんって本当ですか?」
「それは言うなっ!」
「えへへ!」
えへへ、じゃない!
リラックマの中身がおじさんとか言ったら、夢がなくなるから!
ってか、着ぐるみの中身って大体そんなもんだろ?
リラックマに限ったことじゃない。
俺が怒ると、スヌーピー一般カードは楽しそうに笑った。
まるで、やんちゃして怒られている子供みたいに。
あどけないと言うか、愛嬌があると言うか。
その後も、俺たちはスヌーピー展を楽しんでから解散した。
スヌーピーも、結構可愛いかもしれないと思ったのは内緒だ。