「この会社には少し変わった人物が揃っている。
中でも変わっているのは、アメックスで、ちょっとお高くとまっているけど、嫌な人じゃないしすごくしっかりした人なんだ。
でも、性格が少し厄介なところが少々困るところ。
セキュリティについては口うるさいから、みんなも気を付けた方がいいよ」
「おい、変なことを言うな!」
「なんだ、アメックス居たの?」
「いるに決まってるだろうが!」
全く勝手に俺の事を言いたい放題いいやがって!
なんだ、お高くとまってるって。
俺の年会費は確かに他に比べて高額になっているが、それがまたしっかりしているところをアピールしているんじゃないか。
確かに、俺のセキュリティコードは他社のクレジットカードと比べて、少しややこしいことになっているが、安心できるから悪くないだろ?
さて、気を取り直していこうじゃないか。
こいつは、ライフカード。
こいつも年会費無料と心が広くて、還元率もいいから気前がいいヤツなんだよな。
貸したものもきちんと返してくれるから、周囲からの信頼度も高くて人気があるんだ。
それに、自分の誕生日の時には盛大に祝ってくれるし、変なポイントをくれる。
一体何のポイントなのか知らないが、やたらサービスしてきて困る。
でも、女性からは喜ばれているからいいかもしれないな。
「なぁ、ライフカード、あのポイントって人によって違うのか?」
「ううん、みんな5倍のポイントプレゼントしているよ!
せっかくの誕生日なんだから、いいじゃないか」
5倍のポイント・・・一体普段はどのくらいだというんだ・・・。
ライフカードは、いつもこんな感じ。
不思議なのは、サービスが充実しているからライフカードと仲良くしているだけで何かしらいいことがあるってことだな。
運がいいとかそういうのじゃなくて、一緒に居ることで得られると言うか。
あとは、人脈が広いってところがいいところかな?
「あっ、アメックスとライフカードだ!
何をしているの、そんなところで?」
やってきたのはJCBカードだった。
実はライフカードとJCBカードは仲がいいからよく一緒に行動している。
JCBカードはネットショッピングに特化しているから、ネットショッピングが大好きで、本当によく買い物をしている。
海外へ行くときの保険もしっかりしているから注意力に長けていて、セブンイレブンなどと加盟しているからなのか、よくコンビニに出入りしているのを見かける。
そのせいなのか、男女からの支持は高く誰もが味方をしてくれている。
「なぁ、二人とも聞いてくれよ・・・。
最近、JCB EXTAGEカードの奴が若い奴としか仲良くしたがらなくてさ~。
なんか29歳以上はお断り!とか言われた・・・」
「マジかよ・・・あいつ反抗期じゃないのか?」
「反抗期って、アメックスは決めつけが早いんだよ。
JCB EXTAGEカードは、きっと何か考えがあるんだよ」
JCB EXTAGEカードはJCBカードの弟にあたる人物で、俺も挨拶をしたのはまだ最近と言ったところか。
これは内緒だが、JCBカードよりJCB EXTAGEカードの方が優秀かもしれない。
色々なことをして楽しませてくれたりするからな。
それに、あの有名なセブンイレブンやヨーカドーによく通っているせいなのか、常連の域を超えているような気もする。
そうか・・・29歳以上はお断りか・・・寂しいな。
「そう言えば、JCBカードって姉弟多いよな?
何人いるんだ?」
「んー、ざっと100人強?
居過ぎて、俺ももうよく分からないんだよな~」
確かに・・・JCBカードのところは姉弟が多すぎて俺も分からない。
本人がわかっていないんだから、俺にわかるわけがないよな。
だけど、姉弟が多いってなんか楽しそうでうらやましいな。
すると、ライフカードとJCBカードが俺を見てきた。
何だ、何か顔についているのか?
「そういえばさ、アメックス、また腕あげたんだって?」
「それに今更ながら、アメックスはよく海外に行くよね。
しかも、よく土産とか買ってきてくれるしさ」
「確かに言われてみればそうかもな。
海外旅行するのが俺の趣味だからなー」
「アメックスってさ、あんまり友達作るタイプじゃないよね。
それってすごくない?」
俺はこれと言って友人を作ろうとしない、それは嘘じゃない。
しかし、仲良くなって飲みに行くこともあるし、遊びに行くことだってある。
ライフカードとJCBカードが俺を見て笑っている。
言われてみれば、俺の友人って結構少ないのかもしれないな・・・。
だけど、しょうがないんだよな。
裏切られたり騙されたりしたくないから、どうしても必要以上に警戒してしまう。
だから独特とか一匹狼のように言われるんだろうな。
「アメックスは、いざという時すごく頼もしいよな!
この間の仕事でピンチに陥った時も、助けてくれたしさ」
「そうそう、アメックスは頼もしい!
だけど、空港オタクときたものだ」
「海外旅行も好きだしな」
そう、俺だってやるときはやる男なんだ!
他の連中に負けてられない。
頼もしいと思ってもらえるだけでも嬉しく思える。
空港は魅力的だし、サポートとか管理とかそう言うのって大事だろ?
だから、旅行に関することなら俺に任せろ!
海外旅行だって何度も行っているけど、ちゃんと土産は買ってきているから文句はないだろう。
「あれ、ライフカードも弟がいたよな?
何だっけ・・・学生専用ライフカード、だっけ?」
「そうそう、実はJCBカードと似たようなもんでさ・・・。
学生としか仲良くしないから、俺あんまり口利いてもらえない・・」
「なんか、ライフカードもJCBカードも可愛そうだな。
俺は姉弟いないから、そんな経験ないけど」
俺にも姉弟がいるから、ライフカードたちの不満を理解してやれる。
俺とは違うけど、想像はできるから、やっぱり可愛そうだと思う。
二人とも相手にしてもらえないだなんてな・・・。
姉弟がいるという事に対して嫌だなと思ったことないけど、実際はそうでもなさそうな感じがするな。
でも、相手にしてもらえないのは悲しすぎる。
二人が互いに顔を見合わせて、はぁとため息をつく。
仕事を終えた俺たちは、そのまま居酒屋へと向かう事にした。
会社では仕事をしなきゃいけないから、あまり雑談は出来ない。
仕事終わりに飲みに行くって、すごい解放感だよな!
やっと自由になれたというか、晴々した気持ちになる。
俺たちは食べたいものを注文して、メニューが来るのを待つことにした。
「アメックス、この間の海外旅行はどうだった?」
「ああ、すごく楽しめた。
今回はイタリアに行ってきたんだが、ピザが美味しかった!」
「ピッツァ」
「そう、やっぱり本場のピザの味は日本と違うな~」
「ピッツァ」
「なんだよ、JCBカード!
そんなにピザの発音が気に入らないのか?」
さっきからずっとピッツァピッツァ言いやがって!
そこは普通にピザでいいだろうが。
すると、ライフカードが笑い出した。
やっぱり、どう考えたってピザはピザだと思う。
変に言っても馬鹿にされるだけだ。
ライフカードがまだ笑って、俺とJCBカードを見ている。
「アメックス、発音は正しく。
はい、ピッツァ!」
「・・・・・ピッツァ」
「うぇーい!」
うぇーいじゃねーよ!!
JCBカードもよく海外旅行へ行っているから、発音に気を付けているのかも。
だけど、正直俺には全く関係ない。
そこまで海外旅行なんてしていないし、JCBカードほどではない。
JCBカードが俺の手を取って、勝手にハイタッチをする。
ったく、何なんだ!
JCBカードはちょっと自由過ぎるような気がするな。
キライじゃないけど、うーん、なんだこの気持ちは。
「アメックスのピッツァにカンパーイ!!」
「おいッ!!」
それからビールが運ばれてきて、みんなで乾杯をした。
今の掛け声は何だ、“アメックスのピッツァにカンパーイ”じゃねーよ!
まぁ、ライフカードもJCBカードも楽しんでいるから許してやるか。